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伊藤 拓郎(東東京・帝京)投手

伊藤 拓郎(東東京・帝京)投手 185/81 右/右





       「結局本質的には変わっていなかった。」





伊藤 拓郎は、復活したとか、思っていたよりもいいじゃないか。そんな声が、東東京大会を勝ち抜いた、彼の評価になりつつあった。しかし私は、自らのツィッターの中で、春と根本的には何も変わっていないと指摘していた。その通り、甲子園では一旦リズムを崩すと一人相撲をとってしまう悪癖を覗かせ、4回途中で降板することになる。伊藤の復活神話は、無残に崩れ去った。

私は、春季大会で寸評を残したあと、日米野球東京都選抜で登板した投球も生でみて、更に東京都予選の模様もTVで見ていた。今回の甲子園での投球も含めて、彼の最終寸評を更新したいと思う。

(投球内容)

非常に今のフォームは、試行錯誤の末出来上がったフォームなのだろうが、小手先で投げている印象が強い。1年夏に登場してきた時に、甲子園でいきなり148キロのストレートを投げ込んで魅せたが、その球速を最後まで取り戻すことはできなかった。

今は、制球を重視し、常時140キロ前後~145キロぐらい。以前はキレがなく球威型の球質であったが、今は以前よりもボールがピュッと切れるようになってきた感じがする。ただ幾ら以前よりも制球重視になって球質が変化したとはいえ、彼のストレートは並の高校生では振り遅れるだけの勢いがあるのも確か。

スライダーの曲がりも非常に鋭いのだが、力むと打者の遠くから大きく曲がるので、あまり実戦的ではない。力が抜けて、打者の体の近くで程よく曲がるのが、彼の良い時のスライダー。それにチェンジアップの威力も悪くない。一つ一つの球は素晴らしいのだが、それが投球という一つの形に上手くまとめられないのが、この投手の最大の欠点であるように思える。

この投手、牽制はそれほど鋭くないし、フィールディングも平均的。クィックこそ1.1秒前後と素早いが、それほど野球センスに優れたタイプではない。やはりプレーを見ていると、圧倒的な肉体のポテンシャルが勝ったタイプだと言えよう。

特に右打者には、外角に速球とスライダーを織り交ぜる制球力は確かなのだが、左打者には両サイドにアバウトに投げ分けつつも、甘く入る球が多い。痛打を浴びる多くは、左打者からだという特徴がある。そして自分のリズムが崩れると、必要以上に動揺して、四死球を連発したり、ワイルドピッチで傷口を広げ、置きに来た球を痛打されるなどの悪循環に陥る。良い時とと悪い時の差が激しく、これを根本的に改善して行くことは、なかなか深刻な問題だと言えよう。この選手をみていると、大きな体には似つかわしくなく、とても気持ちが優しい青年なのがわかってくる。

(投球フォーム)

<広がる可能性>

引き上げた足を地面に向けて伸ばすタイプで、見分けの難しい腕の振りのカーブや縦に鋭く落ちるフォークのような球を修得するのは、将来的にも厳しいだろう。そのためスライダーやチェンジアップ・更にカットボールやツーシーム的な、球速豊かな変化球などを磨くことで、投球の幅を広げて行くことになりそうだ。

<ボールの支配>

最後までの体の近くにはグラブがあるので、大まかに両サイドにはボールが投げ分けることができる。ただ投げ終わった後に、肩がクロス側に入り込むので、右打者内角、左打者外角を狙った球は抜けやすい。

また足の甲の押し付けができず、完全に足が地面から浮いてしまっている。これだと思いっきり腕を振ると高めにみんなボールが抜けてしまうのを、「球持ち」を良くすることで小手先でコントロールするようになる。これにより、腕は振れなくなったものの、ある程度の制球はつくようになった。ただボールを置きに来るような傾向が強くなり、生きた球はなかなか投げ込んでこられない。

<故障へのリスク>

以前のような角度のある腕の振りではなく、今は無理のないスリークオーター気味になっている。これより故障の可能性は減ったが、投げ降ろして来るような角度のある球ではなくなった。ただ現状は、何処か痛くて能力を発揮できない、そういった危険性は、ほとんどなくなっているのではないのだろうか。

<実戦的な術>

「着地」までの粘りが甘いので、打者からはタイミングが合わせやすい。そのためその球威・球速よりは、打者が苦にならない球だと言えよう。また体の「開き」も早く、ボールの出所も見やすい。打者からは、どんな球が来るのか読みやすく、甘くない球で捉えることができる。

腕の振りは良いので、速球と各変化球との見分け難しい。ただ「体重移動」は十分ではないので、グッとウエートが乗ったようなボールが行くことはなくなり、上半身の腕の振りの鋭さでキレを生み出すしかなくなっている。

(投球フォームのまとめ)

「球持ち」こそ悪くないが、「着地」「開き」「体重移動」には、課題を残すフォーム。すなわち制球はつくようになったものの、小手先での投球であり、生きた球が行かない上、その球も打ちやすいということだ。上のレベルでも、もう一度フォームを大きくいじる必要性があるのではないのだろうか。

(今後は)

搭載しているエンジンの大きさ・それを発揮するだけの基礎体力には、確かなものがある。しかしその能力を活かす術に課題があり、十分にその良さが発揮できないのだ。

「心技体」の3つの要素でいえば、「体」の持ち得る才能や体格、基礎体力などの部分は十分にプロ級だと言える。しかしながら「技」の部分にも大きな改良が必要なだけでなく、「心」の部分ではプロ向きではないのではないかと心配になる。

そう考えると、プロ入りへは「旬」なのかと言われれば、完全にNO.であると言わざる得ない。しかし彼のような圧倒的なポテンシャルを秘めた選手を、アマでチマチマ育成したところで、上手く才能を開花させられる環境があるのかは、これまた大いなる疑問。あえて育成に自信のある球団が、下位指名か育成あたりで指名して、育てるというのもありなのかな?とも思えてくる。ただ私ならば指名リストに、彼の名前を載せることはしないであろう。果たして、その才能を開花させる日は来るのだろうか?

(2011年 夏)
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