有原 航平(早稲田大・4年)投手
2014/05/31|Category:個別寸評
有原 航平(早稲田大・4年)投手 187/93 右/右 (広陵出身)
「健在ぶりをアピール」
この春の 有原 航平 はどうだったのか?というと、昨秋ほどの内容ではなかったものの、健在ぶりをアピールしたシーズンだったのではないのだろうか。この春の内容で、この秋のドラフトで1位・競合になることを、ほぼ確実にしたことになる。
(この春の成績)
8試合 5勝1敗 52イニング 38安打 6四死球 42奪三振 防御率 1.38
昨秋に比べると、四死球率こそ減っていたものの、あとの数字は昨秋より若干悪くなっている。何より優勝を賭けた早慶戦で、結局勝ちきれなかったことに、この選手がドラフトの目玉?と位置づけるには、物足りないものを感じずにはいられない。
(投球内容)
投球内容は、秋と殆ど変わっていません。
ストレート 常時140キロ台後半~MAX153キロ
それほど力を入れなくても145キロ以上の球を投げ込んできますし、勝負どころで力を入れた球ならば、150キロ台をだいたい刻んで来ます。意識してか無意識なのかわかりませんが、ストレートが微妙に変化したりして、綺麗な回転のストレートよりも、汚く動く球が多いのが特徴。その辺をどの程度意図しているのかは、よくわかりません。ただこれだけの圧倒的な球速がありながら空振りの三振は少ないのは、ストレートで三振を奪う時はズバッとコース一杯に投げ込んだ見逃しの三振であることが多いのことからも伺えます。圧倒的な馬力な持ち主ではありますが、それほど苦になる球ではありません。
変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・フォークなど
カットボールやツーシーム系ボールを除くと、こんな感じでしょうか。どの球も絶対的な威力はないのですが、カウントを稼げたりすることはできます。この投手は、コンビネーション投手で、どの球が軸というのはあまりありません。
右打者の時は球筋が安定していますが、左打者の時は若干アバウトになるように思います。
その他
昨年はもっと鋭い牽制を入れていたようですが、観戦した試合では見られませんでした。むしろクィックがあまり上手くなかったのが、今や1.05秒前後で投げ込めるようになり、その辺の成長は感じます。
(投球の見た目)
2季連続で安定した成績を残した今シーズンは、ピッチングのコツは完全に掴んだのかなと思います。特に昨秋から大きく変わった印象はなく、相変わらずメリハリが感じない投球で、それほど心惹かれるものはありません。ただただ投球全体のパワーの次元が、他の投手とは違うのかなとは思います。
間合いや投球術などにセンスは感じないものの、コントロールが安定していて、どの変化球もそれなりで、ストレートの水準が極めて高いことを考えると、1位競合の器であることは間違いないと思います。ただしプロでいきなり15勝とか、図抜けた数字を期待できるのかには疑問が残ります。
(投球フォーム)
<広がる可能性> ☆☆
引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落ちません。そのため体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適しません。
それ以上に気になるのは、「着地」までの粘りに欠け、あっさり地面を捉えてしまうところ。体を捻り出す時間が確保できず、好い変化球が習得し難いのが気になります。彼はいろいろな変化球を投げられますが、その球でストライクは取れますが、相手を仕留めきれるほどの球がありません。その辺の理由は、この「着地」の早さにあると考えられます。
<ボールの支配> ☆☆☆
グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲が地面から浮きがちで、力を入れて投げるとボール上吊る傾向にあります。それでも高いコントロールを維持できるのは、「球持ち」が非常に好いこと。ここに一つ、彼の特殊技能が垣間見れます。
<故障のリスク> ☆☆☆
お尻が落とせない割に、カーブやフォークを投げますが、それほど頻度は多くないので悲観しなくても好いでしょう。
腕の送り出しには無理がなく、肩への負担も少ないはず。元来力投派でもないので、故障の可能性は低いと考えられます。
<実戦的な術> ☆☆
「着地」までの粘りに乏しく、打者としては合わせやすいはず。更に体の「開き」も早く、ボールの出処は見やすい。それでもそれほど打たれないのは、圧倒的なボールの威力だけでなく、ボールが見え始めてからでも、なかなかリリースを迎えない「球持ち」の良さがあり、これが打者のタイミングを微妙に狂わせているのではないのでしょうか。
<フィニッシュ> ☆☆☆
腕は鋭く振られており、速球と変化球の見極めは困難。しかしボールへの体重の乗せは、体が流れてしまっていて充分ではない。ボールが変なシュート回転するのは意図的にやっているというよりは、フォームの関係からではないのだろうか。
(フォームのまとめ)
投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」こそ素晴らしいが、あとの「着地」「開き」「体重移動」では、いずれも課題を抱えていることがわかる。
制球を司る動作と故障の可能性については平均的で、許容範囲内ではないかと思う。特に4年間大きな故障をしなかった丈夫な体と安定したコントロールは、技術以上に確かなものがある。
(最後に)
この選手の投球にピンと来ないのは、「着地」までの粘りの無さから来る淡白さだとわかった。また投球自体にメリハリがなく、特に勝負どころでの強さを感じない、むしろ負のスパイラルの方が優先している投手にすら思える。そのためプロでは、あまり勝ち運に恵まれない投手になるのではないかと危惧する。
しかしこの投手がキャパ全開になって投げる時のパワー・ボールの勢いは凄まじく、菅野(巨人)や大瀬良(広島)よりも、持っている器は大きいのではないかと考える。しかし菅野のような勝てる投手とは感じないし、大瀬良ほどボールに存在感がないのは気になるところ。一年目から二桁前後は勝てるとは思うが、15勝級の選手になれるには、もう一皮二皮向けられるかにかかっている。現状は、ローテーションの一角が欲しい球団にはいいが、チームのエースを期待するのはどうか?という疑問は残る。すなわち、ドラフトの目玉というほどの魅力は感じない。
蔵の評価:☆☆☆☆
(2014年 春季リーグ戦)
「健在ぶりをアピール」
この春の 有原 航平 はどうだったのか?というと、昨秋ほどの内容ではなかったものの、健在ぶりをアピールしたシーズンだったのではないのだろうか。この春の内容で、この秋のドラフトで1位・競合になることを、ほぼ確実にしたことになる。
(この春の成績)
8試合 5勝1敗 52イニング 38安打 6四死球 42奪三振 防御率 1.38
昨秋に比べると、四死球率こそ減っていたものの、あとの数字は昨秋より若干悪くなっている。何より優勝を賭けた早慶戦で、結局勝ちきれなかったことに、この選手がドラフトの目玉?と位置づけるには、物足りないものを感じずにはいられない。
(投球内容)
投球内容は、秋と殆ど変わっていません。
ストレート 常時140キロ台後半~MAX153キロ
それほど力を入れなくても145キロ以上の球を投げ込んできますし、勝負どころで力を入れた球ならば、150キロ台をだいたい刻んで来ます。意識してか無意識なのかわかりませんが、ストレートが微妙に変化したりして、綺麗な回転のストレートよりも、汚く動く球が多いのが特徴。その辺をどの程度意図しているのかは、よくわかりません。ただこれだけの圧倒的な球速がありながら空振りの三振は少ないのは、ストレートで三振を奪う時はズバッとコース一杯に投げ込んだ見逃しの三振であることが多いのことからも伺えます。圧倒的な馬力な持ち主ではありますが、それほど苦になる球ではありません。
変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・フォークなど
カットボールやツーシーム系ボールを除くと、こんな感じでしょうか。どの球も絶対的な威力はないのですが、カウントを稼げたりすることはできます。この投手は、コンビネーション投手で、どの球が軸というのはあまりありません。
右打者の時は球筋が安定していますが、左打者の時は若干アバウトになるように思います。
その他
昨年はもっと鋭い牽制を入れていたようですが、観戦した試合では見られませんでした。むしろクィックがあまり上手くなかったのが、今や1.05秒前後で投げ込めるようになり、その辺の成長は感じます。
(投球の見た目)
2季連続で安定した成績を残した今シーズンは、ピッチングのコツは完全に掴んだのかなと思います。特に昨秋から大きく変わった印象はなく、相変わらずメリハリが感じない投球で、それほど心惹かれるものはありません。ただただ投球全体のパワーの次元が、他の投手とは違うのかなとは思います。
間合いや投球術などにセンスは感じないものの、コントロールが安定していて、どの変化球もそれなりで、ストレートの水準が極めて高いことを考えると、1位競合の器であることは間違いないと思います。ただしプロでいきなり15勝とか、図抜けた数字を期待できるのかには疑問が残ります。
(投球フォーム)
<広がる可能性> ☆☆
引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落ちません。そのため体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適しません。
それ以上に気になるのは、「着地」までの粘りに欠け、あっさり地面を捉えてしまうところ。体を捻り出す時間が確保できず、好い変化球が習得し難いのが気になります。彼はいろいろな変化球を投げられますが、その球でストライクは取れますが、相手を仕留めきれるほどの球がありません。その辺の理由は、この「着地」の早さにあると考えられます。
<ボールの支配> ☆☆☆
グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲が地面から浮きがちで、力を入れて投げるとボール上吊る傾向にあります。それでも高いコントロールを維持できるのは、「球持ち」が非常に好いこと。ここに一つ、彼の特殊技能が垣間見れます。
<故障のリスク> ☆☆☆
お尻が落とせない割に、カーブやフォークを投げますが、それほど頻度は多くないので悲観しなくても好いでしょう。
腕の送り出しには無理がなく、肩への負担も少ないはず。元来力投派でもないので、故障の可能性は低いと考えられます。
<実戦的な術> ☆☆
「着地」までの粘りに乏しく、打者としては合わせやすいはず。更に体の「開き」も早く、ボールの出処は見やすい。それでもそれほど打たれないのは、圧倒的なボールの威力だけでなく、ボールが見え始めてからでも、なかなかリリースを迎えない「球持ち」の良さがあり、これが打者のタイミングを微妙に狂わせているのではないのでしょうか。
<フィニッシュ> ☆☆☆
腕は鋭く振られており、速球と変化球の見極めは困難。しかしボールへの体重の乗せは、体が流れてしまっていて充分ではない。ボールが変なシュート回転するのは意図的にやっているというよりは、フォームの関係からではないのだろうか。
(フォームのまとめ)
投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」こそ素晴らしいが、あとの「着地」「開き」「体重移動」では、いずれも課題を抱えていることがわかる。
制球を司る動作と故障の可能性については平均的で、許容範囲内ではないかと思う。特に4年間大きな故障をしなかった丈夫な体と安定したコントロールは、技術以上に確かなものがある。
(最後に)
この選手の投球にピンと来ないのは、「着地」までの粘りの無さから来る淡白さだとわかった。また投球自体にメリハリがなく、特に勝負どころでの強さを感じない、むしろ負のスパイラルの方が優先している投手にすら思える。そのためプロでは、あまり勝ち運に恵まれない投手になるのではないかと危惧する。
しかしこの投手がキャパ全開になって投げる時のパワー・ボールの勢いは凄まじく、菅野(巨人)や大瀬良(広島)よりも、持っている器は大きいのではないかと考える。しかし菅野のような勝てる投手とは感じないし、大瀬良ほどボールに存在感がないのは気になるところ。一年目から二桁前後は勝てるとは思うが、15勝級の選手になれるには、もう一皮二皮向けられるかにかかっている。現状は、ローテーションの一角が欲しい球団にはいいが、チームのエースを期待するのはどうか?という疑問は残る。すなわち、ドラフトの目玉というほどの魅力は感じない。
蔵の評価:☆☆☆☆
(2014年 春季リーグ戦)
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