吉田 嵩(海星3年)投手
2014/10/03|Category:個別寸評
吉田 嵩(海星3年)投手 181/85 右/右
「時期尚早か?」
甲子園の大会前は、殆ど注目される存在ではなかった 吉田 嵩 。しかし甲子園の舞台では、真上から叩きつける腕の振りから、素晴らしいボールを連発。僅か4回2/3イニングの登板でしかなかったが、見ている我々に強烈なインパクトを残した。しかし素材として魅力は感じられるものの、今がプロ入りの旬なのかは意見が別れるところではないのだろうか。
(投球内容)
ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。
ストレート 常時140キロ台~MAX145キロ
ボールは真ん中~高めに集まる傾向は強いが、ボールそのものの威力・勢いには見るべきものがあります。特に球威と勢いを兼ね備えた厚みのある球質は、ドラフト候補のそれだと言えるでしょう。そのストレートを、両サイドに散らしてきます。ボールそのものは素晴らしいのですが、コースを突いた球でも打ち返されてしまうなど、比較的合わされやすい側面があります。
変化球 スライダー・カットボール・ツーシームなど
変化球は、基本的に横の変化。それも、比較的球速のある変化を得意とします。120キロ台のスライダー・130キロ台のカットボール・135キロ前後のツーシームだかシュートボール。緩急や縦の変化を使うことはなく、リリーフでの出番が多いので、スピード系のボールで押してきます。
長崎予選ではイニング数と同程度の奪三振を奪えていましたが、甲子園での4回2/3イニングでは2三振と、それほど元来三振を奪えるタイプではないと考えます。
その他
さすがに普段は外野などを守っており、フィールディングの動きの良さが目立ちます。甲子園での二松学舎戦でも、送りバントの際に二塁で二度連続で刺しました。クィックは、1.15~1.20秒と平均的。牽制は、ややモーションが大きいのが気になります。特にランナーへの注意力が弱い部分があり、あっさりフォームを盗まれて盗塁を許していたのは気になりました。
(投球のまとめ)
甲子園では制球のアバウトさは感じたものの、四死球で自滅するような不安定さはありませんでした。しかし長崎予選では、13回1/3イニングで10四死球と不安定さを覗かせます。
ストレートの勢いは素晴らしいものの、それほど苦になく合わせられるフォーム。更に現状は、これは!というほどの変化球もないなど気になる材料。素材としては魅力を感じますが、まだ素材型の域を脱していないのではないか、そんな気がしてなりません。
(投球フォーム)
実際の投球を見る限り、まだまだ不安な感じは否めません。そのためフォーム分析を行い、今後の可能性を考えてみたいと思います。
<広がる可能性> ☆☆
引き上げた足を地面に向けてピンと伸ばすので、お尻は一塁側には落ちません。すなわち身体を捻り出すスペースが確保できないので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球には適しません。現状のピッチングスタイルが、それを物語っているようにも思えます。
また「着地」までの粘りが充分ではないので、身体を捻り出す時間も充分ではないはず。そういった意味では、カーブやフォーク以外の球種でも、キレや曲がりの幅という意味でも武器になるほどのものを身につけられるかは、将来的に不安が残ります。
<ボールの支配> ☆☆☆
グラブは最後まで内に抱えられているので、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲の地面への押し付けが遅く、ボールは高めに集まりやすくなっています。「球持ち」自体は平均的で、可も不可もなしといった感じでしょうか。もっとボールを押し込まれるようになったり指先の感覚を磨く一方で、足の甲の押し付けが早い段階で出来ると、低めへの球も増えるのではないのでしょうか。
<故障のリスク> ☆☆☆
お尻は落とせませんが、カーブやフォークといった捻り出す球種を投げないので、肘への負担は少ないはず。
腕の角度は真上から降り下ろしていますが、送り出しを見る感じでは無理は感じません。しかしかなりの力投派でもあり、消耗は激しいのではないのでしょうか。それだけに、故障には充分注意して欲しいと思います。
<実戦的な術> ☆☆☆
体の「開き」はそれほどでもないのですが、「着地」までの粘りの無さが打者にとっては苦にならないフォームになっています。また高めに浮く球筋のために、打者には余計に対応しやすくなっています。
腕を強く叩くことができるので、速球と変化球の見極めは困難。フォークはフォームの構造上厳しいですが、軽く握ったスピリットあたりならば生かせるかもしれません。ボールへの体重の乗せが遅いのは気になりますが、それでもあれだけのボールの勢い・厚みのあるボールを投げられるので、これがグッと乗せられるように凄いことになるのではないのでしょうか。
(フォームのまとめ)
投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」において、「着地」に一番の課題があり、その他の部分も改善の余地が残されています。
コントロールを司る動作もボールを高めに集まりやすく、故障へのリスクも、けして低いわけではありません。そういった意味では、フォームの観点でも発展途上であり、今後どう転ぶかは掴み難いといえるでしょう。
(最後に)
実際の投球、フォーム分析をしてみても、かなりの素材型でリスキーであることがわかってきました。確かに近い将来150キロ級を連発してもおかしくない資質を持っており、素材としてはプロ級でしょう。しかしそこから使えるだけの技術を本当に身につけられるのか? そういった意味では不安でなりません。
個人的には、高校からプロへゆくよりも、社会人あたりでワンクッション置いた方が良いのではないかと考えます。しかし恐らくドラフトでは下位指名~育成あたりで指名されるのではないのでしょうか。結局プロ入りしても、同期が大学を卒業する頃にクビになっていは意味がありません。もう少し、着実なステップを歩んだ方がと思うのですが・・・。
(2014年夏 甲子園)
「時期尚早か?」
甲子園の大会前は、殆ど注目される存在ではなかった 吉田 嵩 。しかし甲子園の舞台では、真上から叩きつける腕の振りから、素晴らしいボールを連発。僅か4回2/3イニングの登板でしかなかったが、見ている我々に強烈なインパクトを残した。しかし素材として魅力は感じられるものの、今がプロ入りの旬なのかは意見が別れるところではないのだろうか。
(投球内容)
ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。
ストレート 常時140キロ台~MAX145キロ
ボールは真ん中~高めに集まる傾向は強いが、ボールそのものの威力・勢いには見るべきものがあります。特に球威と勢いを兼ね備えた厚みのある球質は、ドラフト候補のそれだと言えるでしょう。そのストレートを、両サイドに散らしてきます。ボールそのものは素晴らしいのですが、コースを突いた球でも打ち返されてしまうなど、比較的合わされやすい側面があります。
変化球 スライダー・カットボール・ツーシームなど
変化球は、基本的に横の変化。それも、比較的球速のある変化を得意とします。120キロ台のスライダー・130キロ台のカットボール・135キロ前後のツーシームだかシュートボール。緩急や縦の変化を使うことはなく、リリーフでの出番が多いので、スピード系のボールで押してきます。
長崎予選ではイニング数と同程度の奪三振を奪えていましたが、甲子園での4回2/3イニングでは2三振と、それほど元来三振を奪えるタイプではないと考えます。
その他
さすがに普段は外野などを守っており、フィールディングの動きの良さが目立ちます。甲子園での二松学舎戦でも、送りバントの際に二塁で二度連続で刺しました。クィックは、1.15~1.20秒と平均的。牽制は、ややモーションが大きいのが気になります。特にランナーへの注意力が弱い部分があり、あっさりフォームを盗まれて盗塁を許していたのは気になりました。
(投球のまとめ)
甲子園では制球のアバウトさは感じたものの、四死球で自滅するような不安定さはありませんでした。しかし長崎予選では、13回1/3イニングで10四死球と不安定さを覗かせます。
ストレートの勢いは素晴らしいものの、それほど苦になく合わせられるフォーム。更に現状は、これは!というほどの変化球もないなど気になる材料。素材としては魅力を感じますが、まだ素材型の域を脱していないのではないか、そんな気がしてなりません。
(投球フォーム)
実際の投球を見る限り、まだまだ不安な感じは否めません。そのためフォーム分析を行い、今後の可能性を考えてみたいと思います。
<広がる可能性> ☆☆
引き上げた足を地面に向けてピンと伸ばすので、お尻は一塁側には落ちません。すなわち身体を捻り出すスペースが確保できないので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球には適しません。現状のピッチングスタイルが、それを物語っているようにも思えます。
また「着地」までの粘りが充分ではないので、身体を捻り出す時間も充分ではないはず。そういった意味では、カーブやフォーク以外の球種でも、キレや曲がりの幅という意味でも武器になるほどのものを身につけられるかは、将来的に不安が残ります。
<ボールの支配> ☆☆☆
グラブは最後まで内に抱えられているので、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲の地面への押し付けが遅く、ボールは高めに集まりやすくなっています。「球持ち」自体は平均的で、可も不可もなしといった感じでしょうか。もっとボールを押し込まれるようになったり指先の感覚を磨く一方で、足の甲の押し付けが早い段階で出来ると、低めへの球も増えるのではないのでしょうか。
<故障のリスク> ☆☆☆
お尻は落とせませんが、カーブやフォークといった捻り出す球種を投げないので、肘への負担は少ないはず。
腕の角度は真上から降り下ろしていますが、送り出しを見る感じでは無理は感じません。しかしかなりの力投派でもあり、消耗は激しいのではないのでしょうか。それだけに、故障には充分注意して欲しいと思います。
<実戦的な術> ☆☆☆
体の「開き」はそれほどでもないのですが、「着地」までの粘りの無さが打者にとっては苦にならないフォームになっています。また高めに浮く球筋のために、打者には余計に対応しやすくなっています。
腕を強く叩くことができるので、速球と変化球の見極めは困難。フォークはフォームの構造上厳しいですが、軽く握ったスピリットあたりならば生かせるかもしれません。ボールへの体重の乗せが遅いのは気になりますが、それでもあれだけのボールの勢い・厚みのあるボールを投げられるので、これがグッと乗せられるように凄いことになるのではないのでしょうか。
(フォームのまとめ)
投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」において、「着地」に一番の課題があり、その他の部分も改善の余地が残されています。
コントロールを司る動作もボールを高めに集まりやすく、故障へのリスクも、けして低いわけではありません。そういった意味では、フォームの観点でも発展途上であり、今後どう転ぶかは掴み難いといえるでしょう。
(最後に)
実際の投球、フォーム分析をしてみても、かなりの素材型でリスキーであることがわかってきました。確かに近い将来150キロ級を連発してもおかしくない資質を持っており、素材としてはプロ級でしょう。しかしそこから使えるだけの技術を本当に身につけられるのか? そういった意味では不安でなりません。
個人的には、高校からプロへゆくよりも、社会人あたりでワンクッション置いた方が良いのではないかと考えます。しかし恐らくドラフトでは下位指名~育成あたりで指名されるのではないのでしょうか。結局プロ入りしても、同期が大学を卒業する頃にクビになっていは意味がありません。もう少し、着実なステップを歩んだ方がと思うのですが・・・。
(2014年夏 甲子園)
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