中村 奨吾(早稲田大・4年)二塁
2014/06/03|Category:個別寸評
中村 奨吾(早稲田大・4年)二塁 180/75 右/右 (天理出身)
「数字ほど悪くはないと思うが」
今シーズン期待の高かった 中村 奨吾 は、12試合 2本 6打点 3盗塁 .239厘 と、ドラフト上位候補としては寂しい成績で終っている。まして大学野球最大の舞台である 全日本大学選手権 に、最終学年出場できないということは、夏の甲子園に出場出来なかったようなものだから。しかし私が見る限り、中村の内容がそれほど悪いようには見えなかった。芯で捉えた打球でも野手の正面を突くことも多く、内容的にはそれほど悲観するほどのことはないと考えている。
(走塁面)
一塁までの塁間は、3.95~4.15秒ぐらいで駆け抜けることが多い。これを左打者に換算すると3.9秒~3.7秒ぐらいであるから、プロに混ぜてもトップクラスの快速であることがわかる。しかしながら、彼の今シーズンの盗塁数は僅か3個。多いシーズンでも5個ぐらいと、際立つ数字ではない。
彼ほどの走力があれば、7,8個~10個以上は記録して欲しいところだが、現状の彼のプレースタイル・意識・技術からして、そこまで突出した数字は期待できない。彼がプロで生き残る術として、足というものを明確に自覚できるまでは、走力でのアピールはあまり期待できないだろう。
(守備面)
やや腰高なのと、スローイングが少し雑なところが気になります。それでも今シーズンの失策数は0であり、安定感は悪くありません。特にこの選手は、大型でも必要なときに素早く動けます。カバーリングやポジショニングなども悪くなく、二塁手としてゲームメイクできるディフェンス力があります。特に遊撃手としては厳しいのですが、二塁手に固定すれば充分な成果は期待できるでしょう。特に日本人の二塁手としては稀な強肩の持ち主でもあり、深いところからの送球やゲッツーを多く奪える今までの日本人プレーヤーには見られないスケールの大きな守備。
まだまだ技術的には粗い部分はありますが、肩・足というポテンシャルの高さは、破格の選手だと言えます。
(打撃内容)
個人的にはボールへの対応力にピンと来るものはないのですが、常に強烈な打球を放つように、肉体のポテンシャルの高さ・体の強さには目を惹くものがあります。今回は、オフシーズンに作成した際に行ったフォーム分析と比較して、今シーズンの打撃フォームを考えてみましょう。
<構え> ☆☆☆
両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添えます。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスなどもそれなりで、昨秋から大きくは変わっていないように思います。やはり特に悪くはないのですが、少し固く感じさせる構え。まだ余計な力が、入っているのかもしれません。
<仕掛け> 平均的な仕掛け
昨秋までは「遅めの仕掛け」を採用していましたが、今年は投手の重心が下がりきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。これは、ある程度の対応力と長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターが多く行う仕掛けです。しかし仕掛けは選手のタイミングの根本なので、この辺が打撃を狂わせた要因かもしれません。
<足の運び> ☆☆☆
昨秋に比べると、始動~着地までの時間に余裕があり、速球でも変化球でもスピードの変化に幅広く対応しやすくなったはず。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも対応しやすいサイドへの対応もオールマイティーに。踏み込んだ足元もブレないで、外角の厳しい球や低めの球にもついて行けます。しかし元来は、引っ張って巻き込む打撃を得意としています。
<リストワーク> ☆☆
早めに打撃の準備である「トップ」の形をつくり、速い球に立ち後れないようにしています。しかしバットの振り出しは体から離れて振り出す傾向にあり、更にバットの先端でもあるヘッドも下がり相当遠回りなドアスイングになっていました。これは昨秋よりも悪くなっており、ヘッドスピードの速さでも補いません。スイングする際に、バットの先端であるヘッドを少し立てるような意識で振れると、もう少し綺麗に振り抜けるのではないのでしょうか。
<軸> ☆☆☆
足の上げ下げはあり、目線の動きは平均的。体の開きは我慢出来ていますが、多少軸足が前に崩れがちで、体がツッコム傾向にあるのかもしれません。体が突っ込むと、どうしても早く開いて打てる球が限られてしまいます。
(打撃のまとめ)
よりいろいろな球を打てるようにと、始動を早めたりと意識的に心がけたのかもしれません。しかしこの選手は、元々甘い球を逃さず叩くような打撃を持ち味としており、なんでも捌きたいという器用さには向かないタイプ。またその打ちたい気持ちが優先したのか、体が前に突っ込んだりして開きの早いフォームになってしまってます。それが余計に、スイング軌道の悪化につながるなど、打撃の悪循環に陥ったのではないのでしょうか。
元々私は、あまりこの選手のボールを捉える感覚は評価していません。しかし甘い球を逃さない集中力と打ち損じの少ないヘッドスピードの速さがあったので、打てる球は限られていても結果を残すことが出来ていました。しかし今シーズンは、その辺が狂ってしまったように思います。
(最後に)
始動のタイミングは、合わないと思えば戻すことは難しくはありません。まして大きな怪我をしたわけでもないので、元々持っているポテンシャルが損なわれたわけではないでしょう。そういった意味では、素材としての魅力は薄れてはいません。
入団すぐに、セカンドのポジションを空けて待っているような球団が、1位の枠を用意すべきかと思います。逆に彼に他のポジションを期待したり、競争を煽る意味で獲得すべき選手ではないように思います。
一年目から即大活躍することはないと思いますが、経験を重ねるうちに何かを掴んで成績をあげて来るタイプだと考えます。持っている資質は破格のものがあるので、上手く才能が爆発すれば今までの日本人にはいないような新たなセカンド像が浮かび出てくるかもしれません。個人的には好みのタイプではないのですが、上位指名は揺るがないと評価します。
蔵の評価:☆☆☆
(2014年 春季リーグ戦)
「数字ほど悪くはないと思うが」
今シーズン期待の高かった 中村 奨吾 は、12試合 2本 6打点 3盗塁 .239厘 と、ドラフト上位候補としては寂しい成績で終っている。まして大学野球最大の舞台である 全日本大学選手権 に、最終学年出場できないということは、夏の甲子園に出場出来なかったようなものだから。しかし私が見る限り、中村の内容がそれほど悪いようには見えなかった。芯で捉えた打球でも野手の正面を突くことも多く、内容的にはそれほど悲観するほどのことはないと考えている。
(走塁面)
一塁までの塁間は、3.95~4.15秒ぐらいで駆け抜けることが多い。これを左打者に換算すると3.9秒~3.7秒ぐらいであるから、プロに混ぜてもトップクラスの快速であることがわかる。しかしながら、彼の今シーズンの盗塁数は僅か3個。多いシーズンでも5個ぐらいと、際立つ数字ではない。
彼ほどの走力があれば、7,8個~10個以上は記録して欲しいところだが、現状の彼のプレースタイル・意識・技術からして、そこまで突出した数字は期待できない。彼がプロで生き残る術として、足というものを明確に自覚できるまでは、走力でのアピールはあまり期待できないだろう。
(守備面)
やや腰高なのと、スローイングが少し雑なところが気になります。それでも今シーズンの失策数は0であり、安定感は悪くありません。特にこの選手は、大型でも必要なときに素早く動けます。カバーリングやポジショニングなども悪くなく、二塁手としてゲームメイクできるディフェンス力があります。特に遊撃手としては厳しいのですが、二塁手に固定すれば充分な成果は期待できるでしょう。特に日本人の二塁手としては稀な強肩の持ち主でもあり、深いところからの送球やゲッツーを多く奪える今までの日本人プレーヤーには見られないスケールの大きな守備。
まだまだ技術的には粗い部分はありますが、肩・足というポテンシャルの高さは、破格の選手だと言えます。
(打撃内容)
個人的にはボールへの対応力にピンと来るものはないのですが、常に強烈な打球を放つように、肉体のポテンシャルの高さ・体の強さには目を惹くものがあります。今回は、オフシーズンに作成した際に行ったフォーム分析と比較して、今シーズンの打撃フォームを考えてみましょう。
<構え> ☆☆☆
両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添えます。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスなどもそれなりで、昨秋から大きくは変わっていないように思います。やはり特に悪くはないのですが、少し固く感じさせる構え。まだ余計な力が、入っているのかもしれません。
<仕掛け> 平均的な仕掛け
昨秋までは「遅めの仕掛け」を採用していましたが、今年は投手の重心が下がりきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。これは、ある程度の対応力と長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターが多く行う仕掛けです。しかし仕掛けは選手のタイミングの根本なので、この辺が打撃を狂わせた要因かもしれません。
<足の運び> ☆☆☆
昨秋に比べると、始動~着地までの時間に余裕があり、速球でも変化球でもスピードの変化に幅広く対応しやすくなったはず。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも対応しやすいサイドへの対応もオールマイティーに。踏み込んだ足元もブレないで、外角の厳しい球や低めの球にもついて行けます。しかし元来は、引っ張って巻き込む打撃を得意としています。
<リストワーク> ☆☆
早めに打撃の準備である「トップ」の形をつくり、速い球に立ち後れないようにしています。しかしバットの振り出しは体から離れて振り出す傾向にあり、更にバットの先端でもあるヘッドも下がり相当遠回りなドアスイングになっていました。これは昨秋よりも悪くなっており、ヘッドスピードの速さでも補いません。スイングする際に、バットの先端であるヘッドを少し立てるような意識で振れると、もう少し綺麗に振り抜けるのではないのでしょうか。
<軸> ☆☆☆
足の上げ下げはあり、目線の動きは平均的。体の開きは我慢出来ていますが、多少軸足が前に崩れがちで、体がツッコム傾向にあるのかもしれません。体が突っ込むと、どうしても早く開いて打てる球が限られてしまいます。
(打撃のまとめ)
よりいろいろな球を打てるようにと、始動を早めたりと意識的に心がけたのかもしれません。しかしこの選手は、元々甘い球を逃さず叩くような打撃を持ち味としており、なんでも捌きたいという器用さには向かないタイプ。またその打ちたい気持ちが優先したのか、体が前に突っ込んだりして開きの早いフォームになってしまってます。それが余計に、スイング軌道の悪化につながるなど、打撃の悪循環に陥ったのではないのでしょうか。
元々私は、あまりこの選手のボールを捉える感覚は評価していません。しかし甘い球を逃さない集中力と打ち損じの少ないヘッドスピードの速さがあったので、打てる球は限られていても結果を残すことが出来ていました。しかし今シーズンは、その辺が狂ってしまったように思います。
(最後に)
始動のタイミングは、合わないと思えば戻すことは難しくはありません。まして大きな怪我をしたわけでもないので、元々持っているポテンシャルが損なわれたわけではないでしょう。そういった意味では、素材としての魅力は薄れてはいません。
入団すぐに、セカンドのポジションを空けて待っているような球団が、1位の枠を用意すべきかと思います。逆に彼に他のポジションを期待したり、競争を煽る意味で獲得すべき選手ではないように思います。
一年目から即大活躍することはないと思いますが、経験を重ねるうちに何かを掴んで成績をあげて来るタイプだと考えます。持っている資質は破格のものがあるので、上手く才能が爆発すれば今までの日本人にはいないような新たなセカンド像が浮かび出てくるかもしれません。個人的には好みのタイプではないのですが、上位指名は揺るがないと評価します。
蔵の評価:☆☆☆
(2014年 春季リーグ戦)
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