小野 郁(西日本短大附3年)投手
2014/09/12|Category:個別寸評
小野 郁(西日本短大附3年)投手 177/70 右/右
「甲子園組の方が上だろ」
甲子園に来られなかった地方敗退組の中でも、最も話題だったのが、小野 郁 。しかしその投球を見ていると、甲子園に出場した 飯塚 悟史(日本文理)の方が高度な投球をしていたし、岩下 大輝(星稜)の方が迫力を感じるし、同じ九州の 佐野 皓太(大分)の方が、将来性を感じずにはいられない。確かにコンスタントに145キロを越えて来るようなストレートの速さは破格だが、その将来性を考えると、私は彼が上位指名の器なのかには疑問が残る。
(投球内容)
ストレート 常時140キロ台~MAX150キロ
この投手のストレートは、手元で伸びるとかそういう感じはなく、指先から放たれるとズバーンとミットまで機械的に放たれるような球を投げます。何処かそのボールは平面的で、バッティングセンターのボールを見ているようなイメージ。すなわちボールの放たれるタイミングさえ掴めば、それほど打者は苦になく打ち返せます。
確かに今年生で見た高校生では、この投手が一番速い球を投げていました。コースにもボールが散りますし、けして球が棒球というわけでもありません。しかしボールに角度がなく、何か底の浅さを感じずにはいられません。
それでも破れた九州国際大附戦では、ドラフト上位候補である 清水 優心 捕手に投じた150キロの投球は、見応え充分でした。
変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ
曲がりながら落ちるスライダーとのコンビネーションが主で、他にブレーキの効いたカーブやチェンジアップも効果的で、けして変化球レベルが低い投手ではありません。むしろカーブやチェンジアップを、もっと多めに混ぜても好いのではないかと感じます。むしろ将来的には、ストレートを見せ球にして、変化球で仕留める配球を模索すべきタイプかと。どうも試合を観る限り、速球とスライダーの割合が多すぎて、非常に単調に感じます。
その他
あまり走者がいても、鋭い牽制は入れません。フィールディングも、野手としての才能も評価されている割に、機敏な動きは見られず。仮に野手として考えた場合は、外野手タイプなのでしょう。クィックは、1.05~1.10秒ぐらいにまとめられ、この点では下級生の頃よりも成長した部分。
(投球のまとめ)
確かにストレートは速いのですが、結構簡単に打ち返されます。プロの打者ならば、簡単に捉えて来るでしょう。その理由は、先にも述べた通りマシーンのような感じの球で、伸びや強弱の付け方にも欠け、ボールの魅せ方が下手だから。生で見た時はあまり思わなかったのですが、中継の映像を見ると、肘があまりしならないので伸びが生まれ難いのではないかと感じました。
けしてボールが甘いわけではないのですが、簡単に打ち返されてしまう底の浅いピッチング。何処か同じ福岡の 三嶋 一輝(法大-DeNA)投手のようなイメージとダブリます。今後大きく伸びるというよりは、ボールの活かし方など、投球術を磨くことで大成するしかないのではないのでしょうか。少なくても一年目から、プロで通用する投手ではないはず。
(投球フォーム)
ノーワインドアップから投げ込んで来るフォームで、軸足一本で立った時に膝から上がピンと伸びきって、直立して立つのが気になります。こうなるとバランスよく立てないので、余計な力みが生じたり、着地が早くなりがちだったりと弊害が出ます。
<広がる可能性> ☆☆☆
引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻を一塁側に落とせません。したがって体を捻り出すスペースを確保できないので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化には適しません。典型的な、スライダー・チェンジアップを武器にするフォームです。
それでもこの投手、地面に着きそうなところまで足を降ろしても、そこから前への一伸びがあるので、「着地」が早過ぎることがありません。そのため体を捻り出す時間は確保できるので、変化球の曲がり・キレはけして悪くないのが大きなアドバンテージ。カーブで緩急を利かしたり、フォークのような大きな縦の変化は望み難いですが、それ以外の変化球ならば、将来的に期待できる土台は持っています。
<ボールの支配> ☆☆☆
グラブは最後まで体の近くにはあるのですが、しっかり抱えられているわけではありません。そのためそれほど両サイドに、キッチリ投げ分ける程の精度は見られません。また足の甲での地面への押し付けも遅く、ボールも真ん中~高めに集まりやすい。「球持ち」もそれほど深くなく指先の感覚もイマイチなので、ノーコンではありませんが、かなり大雑把な印象は受けます。
<故障のリスク> ☆☆☆
お尻は落とせませんが、カーブやフォークといった球種は殆ど投げないので、肘への負担は少なそう。腕の角度にも無理はないのですが、結構アーム式で肩で投げている部分もあるので、将来的に肩を痛めないとは言い切れません。
<実戦的な術> ☆☆☆
「着地」までの粘りも悪くなく、体の「開き」も早過ぎることはありません。スライダー系の投手の割に、ボールの出処は見やすくないというのは、彼の強味ではあります。
振り下ろした腕は強く振れますし、ボールにも適度に体重は乗せられています。もう少し足の甲を早めに地面に押し付けられると、もっとグッとボールに体重が乗って来るのではないのでしょうか。
(投球フォームのまとめ)
投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点でいえば、「着地」「開き」「体重移動」は悪くありません。ただし「球持ち」は少し早いので、もう少しボールを長く持って押し込めるようになると、投球にも粘りが感じられるのではないのでしょうか。
コントロールを司る動作にも甘さが残りますし、故障のリスクも感じなくはありません。速球・スライダーのコンビネーション投手の割には、「開き」が抑えられているのと、将来的に好い変化球を習得できる可能性が高いのが、推せる材料でしょうか。
(意識づけ)
一年生の頃から、チームで突出した存在のせいか、典型的なお山の大将です。そのためか、小柄な投手の割に投球に繊細さがなく、プレーが雑なのが投手なだけに気になります。プロのレベルでは壁にぶち当たると思うので、そのときに彼がどう考え、対処できるかにかかっているのではないのでしょうか。
(最後に)
破格の球速の持ち主ではありますが、プロレベルの打者ならば充分対処できるボール。その割に、今後更にもうワンランク・ツーランクの上積みが素材として期待できるのかと言われると微妙です。それゆえに、変化球や投球術・コントロールなどキメ細やかさが求められる割に、性格やプレーが大雑把なので、その点で伸び悩むのではないかと危惧するところ。
ただし速球派にしては「開き」が早くないのと、変化球に活路を見出すことが期待できるフォームではあるので、彼に考える力があるのならば、壁を乗り越えて行ける可能性は残されています。甲子園で名前があがった投手に比べると、ワンランク落ちる気は致しますが、間違いなく高校からプロに入る素材であることは疑いようがありません。私の評価は高くありませんが、ドラフトでは2,3位ぐらいまでには消えるのではないのでしょうか。
蔵の評価:☆☆
(2014年夏 福岡予選)
「甲子園組の方が上だろ」
甲子園に来られなかった地方敗退組の中でも、最も話題だったのが、小野 郁 。しかしその投球を見ていると、甲子園に出場した 飯塚 悟史(日本文理)の方が高度な投球をしていたし、岩下 大輝(星稜)の方が迫力を感じるし、同じ九州の 佐野 皓太(大分)の方が、将来性を感じずにはいられない。確かにコンスタントに145キロを越えて来るようなストレートの速さは破格だが、その将来性を考えると、私は彼が上位指名の器なのかには疑問が残る。
(投球内容)
ストレート 常時140キロ台~MAX150キロ
この投手のストレートは、手元で伸びるとかそういう感じはなく、指先から放たれるとズバーンとミットまで機械的に放たれるような球を投げます。何処かそのボールは平面的で、バッティングセンターのボールを見ているようなイメージ。すなわちボールの放たれるタイミングさえ掴めば、それほど打者は苦になく打ち返せます。
確かに今年生で見た高校生では、この投手が一番速い球を投げていました。コースにもボールが散りますし、けして球が棒球というわけでもありません。しかしボールに角度がなく、何か底の浅さを感じずにはいられません。
それでも破れた九州国際大附戦では、ドラフト上位候補である 清水 優心 捕手に投じた150キロの投球は、見応え充分でした。
変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ
曲がりながら落ちるスライダーとのコンビネーションが主で、他にブレーキの効いたカーブやチェンジアップも効果的で、けして変化球レベルが低い投手ではありません。むしろカーブやチェンジアップを、もっと多めに混ぜても好いのではないかと感じます。むしろ将来的には、ストレートを見せ球にして、変化球で仕留める配球を模索すべきタイプかと。どうも試合を観る限り、速球とスライダーの割合が多すぎて、非常に単調に感じます。
その他
あまり走者がいても、鋭い牽制は入れません。フィールディングも、野手としての才能も評価されている割に、機敏な動きは見られず。仮に野手として考えた場合は、外野手タイプなのでしょう。クィックは、1.05~1.10秒ぐらいにまとめられ、この点では下級生の頃よりも成長した部分。
(投球のまとめ)
確かにストレートは速いのですが、結構簡単に打ち返されます。プロの打者ならば、簡単に捉えて来るでしょう。その理由は、先にも述べた通りマシーンのような感じの球で、伸びや強弱の付け方にも欠け、ボールの魅せ方が下手だから。生で見た時はあまり思わなかったのですが、中継の映像を見ると、肘があまりしならないので伸びが生まれ難いのではないかと感じました。
けしてボールが甘いわけではないのですが、簡単に打ち返されてしまう底の浅いピッチング。何処か同じ福岡の 三嶋 一輝(法大-DeNA)投手のようなイメージとダブリます。今後大きく伸びるというよりは、ボールの活かし方など、投球術を磨くことで大成するしかないのではないのでしょうか。少なくても一年目から、プロで通用する投手ではないはず。
(投球フォーム)
ノーワインドアップから投げ込んで来るフォームで、軸足一本で立った時に膝から上がピンと伸びきって、直立して立つのが気になります。こうなるとバランスよく立てないので、余計な力みが生じたり、着地が早くなりがちだったりと弊害が出ます。
<広がる可能性> ☆☆☆
引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻を一塁側に落とせません。したがって体を捻り出すスペースを確保できないので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化には適しません。典型的な、スライダー・チェンジアップを武器にするフォームです。
それでもこの投手、地面に着きそうなところまで足を降ろしても、そこから前への一伸びがあるので、「着地」が早過ぎることがありません。そのため体を捻り出す時間は確保できるので、変化球の曲がり・キレはけして悪くないのが大きなアドバンテージ。カーブで緩急を利かしたり、フォークのような大きな縦の変化は望み難いですが、それ以外の変化球ならば、将来的に期待できる土台は持っています。
<ボールの支配> ☆☆☆
グラブは最後まで体の近くにはあるのですが、しっかり抱えられているわけではありません。そのためそれほど両サイドに、キッチリ投げ分ける程の精度は見られません。また足の甲での地面への押し付けも遅く、ボールも真ん中~高めに集まりやすい。「球持ち」もそれほど深くなく指先の感覚もイマイチなので、ノーコンではありませんが、かなり大雑把な印象は受けます。
<故障のリスク> ☆☆☆
お尻は落とせませんが、カーブやフォークといった球種は殆ど投げないので、肘への負担は少なそう。腕の角度にも無理はないのですが、結構アーム式で肩で投げている部分もあるので、将来的に肩を痛めないとは言い切れません。
<実戦的な術> ☆☆☆
「着地」までの粘りも悪くなく、体の「開き」も早過ぎることはありません。スライダー系の投手の割に、ボールの出処は見やすくないというのは、彼の強味ではあります。
振り下ろした腕は強く振れますし、ボールにも適度に体重は乗せられています。もう少し足の甲を早めに地面に押し付けられると、もっとグッとボールに体重が乗って来るのではないのでしょうか。
(投球フォームのまとめ)
投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点でいえば、「着地」「開き」「体重移動」は悪くありません。ただし「球持ち」は少し早いので、もう少しボールを長く持って押し込めるようになると、投球にも粘りが感じられるのではないのでしょうか。
コントロールを司る動作にも甘さが残りますし、故障のリスクも感じなくはありません。速球・スライダーのコンビネーション投手の割には、「開き」が抑えられているのと、将来的に好い変化球を習得できる可能性が高いのが、推せる材料でしょうか。
(意識づけ)
一年生の頃から、チームで突出した存在のせいか、典型的なお山の大将です。そのためか、小柄な投手の割に投球に繊細さがなく、プレーが雑なのが投手なだけに気になります。プロのレベルでは壁にぶち当たると思うので、そのときに彼がどう考え、対処できるかにかかっているのではないのでしょうか。
(最後に)
破格の球速の持ち主ではありますが、プロレベルの打者ならば充分対処できるボール。その割に、今後更にもうワンランク・ツーランクの上積みが素材として期待できるのかと言われると微妙です。それゆえに、変化球や投球術・コントロールなどキメ細やかさが求められる割に、性格やプレーが大雑把なので、その点で伸び悩むのではないかと危惧するところ。
ただし速球派にしては「開き」が早くないのと、変化球に活路を見出すことが期待できるフォームではあるので、彼に考える力があるのならば、壁を乗り越えて行ける可能性は残されています。甲子園で名前があがった投手に比べると、ワンランク落ちる気は致しますが、間違いなく高校からプロに入る素材であることは疑いようがありません。私の評価は高くありませんが、ドラフトでは2,3位ぐらいまでには消えるのではないのでしょうか。
蔵の評価:☆☆
(2014年夏 福岡予選)
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