佐村 トラヴィス幹久(沖縄・浦添商)投手
2011/11/04|Category:個別寸評
佐村 トラヴィス幹久(沖縄・浦添商)投手 191/81 右/右
「残念だったなぁ・・・」
今年の夏、私は 佐村を観戦しに沖縄まで足を運んでいた。しかしもう一人沖縄にはドラフトの有力選手がいて、私はそちらの選手の試合を優先。佐村選手の所属する浦添商は、翌日の試合を観戦予定としていた。それだけに、彼が中部商の前に敗れたと訊いて大変残念に思った。唯一私ができたのは、その日の夜沖縄で放送されていた、その試合のダイジェストを見ることだけだった・・・。そこで今回は、昨年に引き続き彼の動画を見て、フォームから感じられる印象を中心に述べて行きたい。あくまでも動画を軽く観ただけなので、具体的な評価づけはできないことをご了承願いたい。
(この夏トラヴィス)
夏前までのトラヴィスは、なかなか実戦でも登板しないことも多く、観戦を狙い撃ちするのは難しい選手だったという。しかし最後の夏に照準をあわせ、見事その成長した姿を魅せてくれた。夏前の6月の動画にも、彼が背番号16をつけていることからも、そのことが伺うことができる。
(投球内容)
いわゆる体を思い通り操れない外人投げなのだが、140キロ前後ぐらいのストレート(セルラーで144キロを記録)に、スライダーとのコンビネーションが、この投手の投球パターンのようだ。他にもフォークだかチェンジアップのような縦の変化も持ち球として持っているようだ。
(投球フォーム)
<広がる可能性>
引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、また骨格の関係上、お尻を一塁側に落とすことはできない。このことからも、腕の振りが緩まないカーブで緩急をつけたり、縦に鋭く落ちるフォークのような球種を身につけることは、極めて困難だと言わざる得ないだろう。また「着地」までの粘りにも欠けるので、将来的にも速球やスライダー・チェンジアップのような、球速豊かな小さな変化を中心に、投球を組み立てて行くことになりそうだ。そのため緩急をつけたり、空振りを誘える球を身につけられるのかが、一つ大きな課題としてあげられる。
<ボールの支配>
グラブを最後まで内に抱えようと言う意識が持てているので、両サイドへの制球は安定しているのでは?ただ足の甲での地面の押しつけは浮いてしまい上体が高く、テイクバックした時も前の肩が上がり、後ろの肩が下がって投槍を投げるような格好になってしまっている。これを、腕を縦に振り下ろすことで抑えこむという強引なフォーム。更に「球持ち」も浅く、指先の感覚には優れているようには見えず、ボールを思い通りコントロールするのには、苦労するのではないか。仮に制球を重視しようとすると、かなり球速を落とそさないと苦しいフォームということになる。
<故障のリスク>
お尻が落とせないフォームだが、カーブや縦の変化を多投しなければ悲観することはないだろう。ただ気になるのは、リリースの際にグラブを持っている肩は下がり、ボールを握っている肩は上がるという、肩への負担の大きな腕の振りになっている。これでは肩への負担も大きいので、日頃から体の手入れには充分注意してもらいたい。
<実戦的な術>
どうしても「着地」までの粘りが作れないので、タイミングが合わせやすく淡白なフォームの印象は受けてしまう。しかし体の「開き」は早すぎることはなく、ボールの出所は隠せている。これにより厳しいところを突けば、打者は手も足も出ないはずだ。「開き」が我慢できているので、コースや球種をいち早く読まれる心配はないだろう。
腕の振りも、まだそれほど鋭くはない。将来的には、鋭い腕の振りを身につけ、速球と変化球の区別を無くしたい。また「体重移動」は、どうしても後ろに重心が残りがちで、ボールにしっかり体重が乗せられていない。球威・球速があっても、打者の手元までグッと来るような勢いのある球は、まだまだ投げられていないのではないのだろうか。ただ動画を見る限り、意外にピュッと打者が差し込まれるようなので、これができるようになると、相当打ちづらくはなりそうだ。
(投球フォームのまとめ)
どうしても、こういった外国人風のフォーム分析をしてしまうと、通常のフォームに比べ全身が使えていないだけに粗が見えてしまう。投球の4大動作である「着地」「球持ち」「体重移動」には課題が多く、例え球がすごくても、それを活かす術はという部分で引っかかる。
唯一悪くなかったのは「開き」の部分、この点に問題がなかったことは大きい。というのは、「開き」が速いと、今後球威・球速が増しても、その恩恵を受けにくいからだ。しかしこういったタイプの選手に、あまり細かいフォーム云々を当てはめても、それを度返しするだけのキャパを秘めているので、正確なスカウティングができないのも確か。そうでなければ、ほとんどのメジャーリーガーは、技術的に失格ということになってしまう。
(最後に)
彼の魅力は、通常のスカウティングの範疇で収まらない可能性・将来性と言う部分だろう。そこを確認できなかったことは、私としては何とも不徳の致すところであります。周りの話を訊く限り野球への姿勢も悪くなさそうだし、最後に夏に成長した姿を見せてくれたと訊いているので、かなり期待したい部分はある。地元横須賀で、今度はじっくりと、その成長を見守って行きたい。
(2011年 夏)
「残念だったなぁ・・・」
今年の夏、私は 佐村を観戦しに沖縄まで足を運んでいた。しかしもう一人沖縄にはドラフトの有力選手がいて、私はそちらの選手の試合を優先。佐村選手の所属する浦添商は、翌日の試合を観戦予定としていた。それだけに、彼が中部商の前に敗れたと訊いて大変残念に思った。唯一私ができたのは、その日の夜沖縄で放送されていた、その試合のダイジェストを見ることだけだった・・・。そこで今回は、昨年に引き続き彼の動画を見て、フォームから感じられる印象を中心に述べて行きたい。あくまでも動画を軽く観ただけなので、具体的な評価づけはできないことをご了承願いたい。
(この夏トラヴィス)
夏前までのトラヴィスは、なかなか実戦でも登板しないことも多く、観戦を狙い撃ちするのは難しい選手だったという。しかし最後の夏に照準をあわせ、見事その成長した姿を魅せてくれた。夏前の6月の動画にも、彼が背番号16をつけていることからも、そのことが伺うことができる。
(投球内容)
いわゆる体を思い通り操れない外人投げなのだが、140キロ前後ぐらいのストレート(セルラーで144キロを記録)に、スライダーとのコンビネーションが、この投手の投球パターンのようだ。他にもフォークだかチェンジアップのような縦の変化も持ち球として持っているようだ。
(投球フォーム)
<広がる可能性>
引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、また骨格の関係上、お尻を一塁側に落とすことはできない。このことからも、腕の振りが緩まないカーブで緩急をつけたり、縦に鋭く落ちるフォークのような球種を身につけることは、極めて困難だと言わざる得ないだろう。また「着地」までの粘りにも欠けるので、将来的にも速球やスライダー・チェンジアップのような、球速豊かな小さな変化を中心に、投球を組み立てて行くことになりそうだ。そのため緩急をつけたり、空振りを誘える球を身につけられるのかが、一つ大きな課題としてあげられる。
<ボールの支配>
グラブを最後まで内に抱えようと言う意識が持てているので、両サイドへの制球は安定しているのでは?ただ足の甲での地面の押しつけは浮いてしまい上体が高く、テイクバックした時も前の肩が上がり、後ろの肩が下がって投槍を投げるような格好になってしまっている。これを、腕を縦に振り下ろすことで抑えこむという強引なフォーム。更に「球持ち」も浅く、指先の感覚には優れているようには見えず、ボールを思い通りコントロールするのには、苦労するのではないか。仮に制球を重視しようとすると、かなり球速を落とそさないと苦しいフォームということになる。
<故障のリスク>
お尻が落とせないフォームだが、カーブや縦の変化を多投しなければ悲観することはないだろう。ただ気になるのは、リリースの際にグラブを持っている肩は下がり、ボールを握っている肩は上がるという、肩への負担の大きな腕の振りになっている。これでは肩への負担も大きいので、日頃から体の手入れには充分注意してもらいたい。
<実戦的な術>
どうしても「着地」までの粘りが作れないので、タイミングが合わせやすく淡白なフォームの印象は受けてしまう。しかし体の「開き」は早すぎることはなく、ボールの出所は隠せている。これにより厳しいところを突けば、打者は手も足も出ないはずだ。「開き」が我慢できているので、コースや球種をいち早く読まれる心配はないだろう。
腕の振りも、まだそれほど鋭くはない。将来的には、鋭い腕の振りを身につけ、速球と変化球の区別を無くしたい。また「体重移動」は、どうしても後ろに重心が残りがちで、ボールにしっかり体重が乗せられていない。球威・球速があっても、打者の手元までグッと来るような勢いのある球は、まだまだ投げられていないのではないのだろうか。ただ動画を見る限り、意外にピュッと打者が差し込まれるようなので、これができるようになると、相当打ちづらくはなりそうだ。
(投球フォームのまとめ)
どうしても、こういった外国人風のフォーム分析をしてしまうと、通常のフォームに比べ全身が使えていないだけに粗が見えてしまう。投球の4大動作である「着地」「球持ち」「体重移動」には課題が多く、例え球がすごくても、それを活かす術はという部分で引っかかる。
唯一悪くなかったのは「開き」の部分、この点に問題がなかったことは大きい。というのは、「開き」が速いと、今後球威・球速が増しても、その恩恵を受けにくいからだ。しかしこういったタイプの選手に、あまり細かいフォーム云々を当てはめても、それを度返しするだけのキャパを秘めているので、正確なスカウティングができないのも確か。そうでなければ、ほとんどのメジャーリーガーは、技術的に失格ということになってしまう。
(最後に)
彼の魅力は、通常のスカウティングの範疇で収まらない可能性・将来性と言う部分だろう。そこを確認できなかったことは、私としては何とも不徳の致すところであります。周りの話を訊く限り野球への姿勢も悪くなさそうだし、最後に夏に成長した姿を見せてくれたと訊いているので、かなり期待したい部分はある。地元横須賀で、今度はじっくりと、その成長を見守って行きたい。
(2011年 夏)
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