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プロ野球ドラフトサイト「迷スカウト」の管理人・蔵建て男が、日本中を駆け巡り本音でトーク!

2022年夏 甲子園総括(投手編)

夏の甲子園が終わって随分と経ちますが、とりあえず一段落ついたので総括でも行って行きます。まずは、3年生を対象とした投手編ということで。

大会で最も注目されたのは、今大会屈指というよりも、全国の高校生でもNO.1ではないかという呼び声の高かった 田中 晴也(日本文理3年)右腕。この投手、立ち上がりに速い球を投げようとして力んで甘く入ったり、球質が低下して失点するケースが目立つ。この日は大丈夫かと思いきや、あれよあれよと失点しまいました。それでも初回に148キロを記録し、ボールの走り自体は悪くなかったです。しかしこの投手の持ち味は、むしろ力が抜けてからの140キロ前後の球速でも右打者の内角を厳しく突く投球こそ真骨頂。カウントを稼ぐスライダーと、日本文理伝統の強烈な縦スラで空振りを奪います。力が抜け出すと想像以上に実戦的な投球ができるものの、ドラフト上位候補にしては、強豪校相手に真っすぐの力で押しきれない物足りなさは春から気になっていました。むしろ、球威・球速で圧倒するよりも、厳しい攻めや変化球を織り交ぜたコンビネーションで、西 勇輝(現阪神)のようなタイプになって大成するかもしれない。また、評判の打撃に関しては、ヒットこそ最後に放ったものの、個人的には生でも観たときも、野手で勝負して行った方がという感じはしなかった。いずれにしてもドラフト順位としては、ハズレ1位~2位の間には消えるのではないかとはみています。将来のローテーション候補を探している球団が、高く評価することになるのではないのでしょうか。

左腕では全国NO.1ではないかという見方もあった 森下 瑠大(京都国際3年)左腕でしたが、選抜はチームがコロナのため出場を断念。また自らもコロナの後遺症に苦しみ、肘痛などでて夏も万全の状態とは言えませんでした。肉体的には昨秋よりかなり成長は遂げていたものの、投げ込み不足からか? 球速は130キロ台中盤~140キロぐらいと振るわず。丁寧には投げようとしたものの、甘い球を一関学院の積極的に逃さずに捕まってしまった。そのため、元来のスライダー・カーブ・チェンジアップなどとのコンビネーションを活かした投球には至らなかった。今大会は、明らかな調整不足であり、どう評価すれば良いのか各球団判断に悩むのではないのだろうか? 少なくても現時点では、上位でゆくのは怖いと判断したのではないのだろうか。

また大会を大いに盛り上げたという意味では、山田 陽翔(近江3年)右腕。下級生までは野手の素材という見方が強かったが、最終学年になり投手としての色彩が強くなってきた。コンスタントに145キロ前後~148キロを記録した真っ直ぐには、勢いだけでなく球威も感じられる。その真っ直ぐを中心に、カウントを稼ぐ横のスライダーと、右打者に対しては縦スラで空振りを誘っていた。また左打者には、140キロ前後で軽く沈むツーシームも巧みに使い分けて来る。投手としてはスケールよりも実戦力が目立つが、同じ軌道・腕の振りから変化させることで、打者にとっては見極めを難しくできるのが武器。凄みは感じられないものの、制球力・マウンドさばきも安定しており、高卒でも2年目ぐらいから一軍のマウンドに上がってきそうな完成度を誇っている。ドラフトでは、3位・4位ぐらいの中位指名になるのではないのだろうか。

むしろ彼よりもスケールでは上を行くのが、川原 嗣貴(3年)右腕は、選抜大会以後の春季大会ではさらに球威を増してきたと評判だった。しかし、この夏の大阪大会ではイマイチで、その状態を引きずったままの登板といった感じ。ボールのキレ・細かい制球力とイマイチで、収まりの悪さを実感させられる。それでも140キロ台中盤を連発する真っ直ぐの角度・球威は、今年の候補には稀なタイプ。2戦目の登板となった二松学舎大付属戦では、9回を6安打・1四死球・8三振 と初戦に比べると元来の彼らしいピッチングを取り戻していた。まだまだ未完成な部分は残るが、スペック的には今年の高校生の中でも屈指ではないのだろうか。特にこの角度や球威は、木製バット相手の方が持ち味が出せそう。プロの指導や環境で、これからどのぐらいの選手にまでなるのか楽しみは尽きない。ドラフト的には、2、3位ぐらいが基本線ではないかとみている。

また川原と共に将来が楽しみなのが、富島の先発・日高 暖己(3年)右腕は、球速こそ130キロ台中盤~140キロ台前半のボールが多く、球威・球速という意味では際立つものはまだない。それでも、立ち上がりから打者の内角を厳しく突くなど、指先の感覚の良さはピカイチ。カーブやスライダーにチェンジアップなども交えつつ、両サイドだけでなくフォークなどにも落差があり的が絞り難い。まだ体が出来ていなく体力・筋力が足りないのかと思いきや、宮崎大会では最終回に140キロ台後半を連発するなど、普段はかなりセーブして投げているのが伺える。本格的に体ができてくれば、将来一軍でもローテーションを担って行ける選手ではないのだろうか。ドラフトでは、3,4位ぐらいの指名を期待しても良さそうな有望株だった。

またポテンシャル的に、この二人にヒケをとらないのが、武元 一輝(智弁和歌山3年)右腕が先発。大型で球速などは下級生のときから非凡なものがあったものの、微妙に収まりの悪さなどがあった。しかし、最終学年になってだいぶ投手らしくなってきており、マウンドさばき、制球力なども向上。球速は、常時140キロ~中盤ぐらいと大きくは伸びていなかったものの、指にかかった時の148キロのボールには今後の可能性を感じさせてくれた。変化球は、カーブ・スライダー、また縦の変化も縦スラななのか? そういった球も見られる。まだまだ成長途上ではあるものの、右の速球派として志望届を提出すれば、本会議の中での指名があるのではないのだろうか。夏の大会後、アメリカでの試合に参加するなど、海外の大学への進学も噂されている。

田中 晴也(日本文理3年)投手  186/92 右/左
森下 瑠大(京都国際3年)投手  180/75 左/左
山田 陽翔(近江3年)投手    175/78 右/右
川原 嗣貴(大阪桐蔭3年)投手  188/85 右/左
日高 暖己(富島3年)投手    184/77 右/左
武元 一輝(智弁和歌山3年)投手 187/86 右/左

このあたりまでが、本会議の有力候補ではないかと。下位~育成候補といったボーダーライン上の選手たち。もしくは、進学が有力とされている選手たちという意味では

下関国際の 古賀 康誠(3年)左腕は、左投手の球速が出にくい甲子園のガンということもあり、130キロ台中盤~140キロそこそこと球速は物足りなかった。しかし、フォームに勢いがあり、打者は吊られて空振りを誘われやすい。そのため、スライダーやチェンジアップなどの変化球も効果的だった。かなりコントロールはバラツキがあるタイプなのだが、こういったタイプは相手打者としては厄介なはず。山口大会終盤から状態が悪く登板していなかったが、無事甲子園初戦の先発のマウンドにたった。ドラフトとなるとボーダーレベルの選手ではあるが、左腕だけに面白いと判断する球団があってもおかしくはない。育成あたりでならば、指名があるかもしれない。

また 仲井 慎(下関国際3年)右腕は、投げ始めから140キロ台中盤を連発する球速がある。スライダーとフォークなどの変化球のキレも良く、こちらも勢いがあって容易には攻略できない。普段守るショートでも、この強肩に加え、右打席から4.25秒前後(左打者換算で4.0秒前後に相当)する俊足持ち主。甲子園での活躍が認められ、高校ジャパンのメンバーにも選出された。いずれにしてもプロ志望届けを提出すれば、下位~育成あたりで指名を検討してくる球団もありそうだ。

猪俣 駿太(明秀日立3年)右腕などは、手足の長い体型を活かしたフォーム。球速は常時140キロ前後(最速145キロ)と驚くほどのものはないものの、この長い腕を生かしてボールが遅れて出てくるような、独特の間を持っている。変化球は、スライダー・カーブ・フォーク系の球はあるものの、ちょっと 大貫 晋一(DeNA)のような打ち難さがあり、面白いとみる球団があるかもしれない。

別所 孝亮(大阪桐蔭3年)右腕などは、初戦は力みで制球が不安だった。それでも元来は、低めの良いところにズバッと決められる爽快感がある投手で、夏の大阪大会では川原よりも状態が良かった。ただし、川原が角度や球威によって甘い球を打ち損じされやすいタイプなのに比べると、別所は良いところに決まらないと打ち返されやすい傾向にある。仮に彼が、プロ志望届を提出したら、各球団どのように評価するのだろうか?

さらに 夏の北海道で急浮上してきた 森谷 大誠(札幌大谷3年)左腕は、小さめなテイクバックから135~143キロの速球を投げ込んできていた。変化球はスライダーを軸に、カーブ・チェンジアップなどを織り交ぜてくる。ストレートがバラツキ荒っぽい印象を受け、制球に不安を抱えるサウスポー。ただし、武器であるスライダーが低めに決まるところは押さえておきたいポイント。また、甲子園のスピードガンは、左腕の場合2~3キロ遅く出ることが多く、その点では球速は少しプラスして考えた方が良いのではないかと。そういった意味では、常時140キロ前後~140キロ台中盤ぐらいは出ていそうな勢いのある球を投げていた。進学希望とのことだが、ドラフトとなると下位~育成あたりのボーダーレベルのランクかと。それでも、球速だけではないところに可能性を見出す球団があっても不思議ではない。

プロ志望届を提出した 森本 哲星(3年)左腕。一塁側にステップし、地面の着きそうなところから足を一伸びすることで、打者としては球筋・フォーム的には合わせ難さがある。球速は135~140キロ強ぐらいと驚くほどのものはなかったが、球速以上に感じさせるボールの勢いも感じられる。曲がりながら沈むスライダーが低めに集まるのも良いところで、プロ志望届を提出予定だとか。ひょっとすると何処かのチームが、育成あたりで指名してくるかもしれないと思わせるものはあった。6回2/3イニングを投げて、6三振・無失点で抑えるなど、チーム逆転の原動力となった。ちょっと癖モノの左腕として、面白いと評価する球団が現れるか?

早くから進学が報道されていた 冨田 遼弥(鳴門3年)左腕などは、両サイドに投げ分けるコントロール・攻めの厳しさが持ち味の実戦派。左腕の球速表示が出にくい甲子園だけに、球速も最速で137キロ止まりとやや物足りなかった。特に選抜では139キロを記録しただけに、春~夏への上積みが感じられなかったのは残念。曲がりながら沈むスライダーとのコンビネーションで、他にチェンジアップ系のボールも織り交ぜてくる。追い込むまでの制球力が良かったが、勝負どころで力を入れると制球が甘くなり、そこを近江打線につけこまれた。選抜では、あの大阪桐蔭をもっとも苦しめた投手だったが、初戦ということもあり、そこまでの内容とはゆかなかった。それでもプロ志望届けを提出すれば、5位前後の指名がありそうな実力の持ち主。ただし、春先から大学進学が噂されており、そこでのスケールアップを目指すことになるのだろう。今後の成長次第では、4年後の上位候補への期待も膨らむ。

選抜では打ち難さを示した マーガード 真偉輝 キアン(星稜3年)投手は、立ち上がりから制球が定まらず、高めに浮いた球などを愛工大名電打線に捉えられた。140キロ前後の球威のある真っ直ぐに、カットボール・スライダー・ツーシームなど動かすボールで詰まらせるのが元来の姿。しかし、動かす球を武器にする投手に必須な、低めに集めるということができなかったのが早々降板する要因となった。この夏のマーガードは、この試合に限らず県大会から調子はイマイチで、状態が上がらないまま本番を迎えてしまった形。それでも肉体的なスペックには余力を感じさせるのと、相手としては対峙し難い嫌らしさを感じるタイプなのは変わらない。内容的には指名ボーダーラインだと思うが、本人がプロ志望ならば、スペックの高さを期待して下位~育成あたりの指名があっても不思議ではないだろう。

こちらも進学が有力視される 有馬 伽久(愛工大名電3年)左腕は、立ち上がりから140キロ前後の真っ直ぐ~中盤を記録するなど、速球の球威・球速はいつも以上だった。ちょっと飛ばし過ぎたことが、後半の失速につながったのかもしれない。速球を中心に、スライダー・チェンジアップ系を織り交ぜ、経験豊富なマウンドさばきも相まって試合を作って行けるタイプ。プロ志向ならば有力な指名な候補になりうるサウスポーだったが、4年後は上位候補として再び名前が上がってきて欲しい。

古賀 康誠(下関国際3年)投手 180/80 左/左
仲井 慎 (下関国際3年)遊撃 177/70 右/右
猪俣 駿太(明秀日立3年)投手 183/83 右/左
別所 孝亮(大阪桐蔭3年)投手 183/87 右/右
森谷 大誠 (札幌大谷3年)投手 172/82 左/右
森本 哲星(市立船橋3年)投手 175/72 左/左
冨田 遼弥(鳴門3年)投手   178/83 左/左
マーガード真偉輝 キアン(星稜3年)投手 186/90 右/右
有馬 伽久(愛工大名電3年)投手 175/75 左/左

名前を上げられる選手数としては、けして少ない年ではない。そのため今年は、候補の粒が少ないわけではないけれど、最上位クラスのレベルが物足りという、他のステージの流れを踏襲しているように思える。そのため地方組含めても、高校生の投手から1位指名が出るかどうかは微妙な状況になっている。

今大会では、全国でも有力どころが甲子園に集結していただけに、それでも物足りなく感じてしまったことは否めない。今年の1位指名は、野手の名前が多く呼ばれる年になるのではないのだろうか。

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